ローマ人の物語〜迷走する帝国(上)〜

ローマ人の物語〈32〉迷走する帝国〈上〉 (新潮文庫 し 12-82)

ローマ人の物語〈32〉迷走する帝国〈上〉 (新潮文庫 し 12-82)


先ずは上巻の分を。。。
正直なところ“読みたいけれど、読みたくなかった”ってのが自分の中に在ると思う。
前作の「終わりの始まりasin:4101181802」でも感じたことだけど、ローマ帝国の衰退していく過程、崩壊への道程は見たくない気持ちが私の中にはある。

ローマ帝国史上「危機の3世紀」とされる時代をこの「迷走する帝国」では描かれている。わずか73年間の間に22人も皇帝が変わったというのだ、紀元1世紀頃は128年間で皇帝9人+α*1、そして紀元2世紀頃は113年間で皇帝6人+αであったという。こうやって比べてみるだけでも3世紀ごろが如何に混乱した帝国運営であったかが想像できる。

しかしながら、読み進めていくと遠い昔に彼方の国で起こっていた出来事とは思えない。実際に最近の我が国の現状をみてみると「迷走ぶり」がダブって仕方がない。
著者の塩野氏が作中で次のようなことを書いている。どこかの国の指導者たちに聞かせたい・・・

政策とは、将来にわたっていかなる影響をもたらすかも洞察したうえで、考えられ実施されるべきものであると思う。そして、深い洞察とは反対の極みにあるのが浅慮である。
P.74

そして別の箇所ではリーダーに対して次のように書く

リーダーには、良き時代をなるべく長くつづかせるためにも、冷徹で細心な舵取りが求められるのである。なにしろ、変わってしまった後でそれをもとにもどすのは、至難の業であるからだ。
P.143

さらに歴史が示す事例については

歴史は、現象としてはくり返さない。だが、この現象に際して露になる人間心理ならばくり返す。それゆえ、人間の心理への深く鋭い洞察と、じぶんの体験していないことでも理解するのに欠かせない想像力と感受性、このうち一つでも欠ければ、かつては成功した例も、失敗例になりうる。
P.186

上記の“歴史”に関しては私の先日の疑問へのちょっとした解答になる。

以上の3文がこの巻で印象に残った言葉だ。

終わっていく姿を知る為に読みたくないが、読まずにはいられない。

“中”と“下”に関しては後日。。。

*1:内乱期の短命な皇帝たち