おばぁちゃまの知恵

先日来、「介護」って話題で考えることが多かったのでそれに関連する事柄を記しておく。

私が仕事で普段接するのは高齢者の方がほとんどだ。それも“超”が付くような高齢者の方が多い。
外来に通院されている方々はとても健康的な方ばかりで、時折聞く話では驚くような行動*1をされる方も多い。
とにかくみんな「元気だなぁー」と感心するばかりだ。

そしてこれとはまた別に入院患者さん達にも接する。こちらもモチロン超高齢者の方が多い。入院された理由は様々で各種の骨折、内臓疾患や脳卒中など色々だ。
仕事ではこういった患者さんに入院初期の段階から「家庭復帰」を目指したお手伝いをすることになる。
高齢者の方の場合、「家庭復帰」に向けて私がまずこころがけている事は「自分の排泄の始末が出来るようになる」という事である。
この「排泄の自立」というのは介護をする上でかなり重要で、介護する方も、介護を受ける方も「トイレの世話をする」「トイレの世話をしてもらう」ということに対して少なからず抵抗感を持つことが多い。だから「排泄の自立」は家族にとっても介護を受けるご本人にとっても大切なことだと考える。
中にはどうしても“寝たきり”となってしまい「排泄の自立」までいく事が出来ない場合もある。
しかし“寝たきり”じゃない場合、ある程度の座位保持ができ、立位保持が出来るなら、たとえトイレまで歩行していくことは困難であったとしても、ちょっとした練習でベッド脇に置いたポータブルトイレに移動出来るようになることが多い。
こうなると介護者の負担は軽減されるだろう。介護と排泄の関係はかなり重要な問題だと考える。

「排泄の自立」にも色々な形態があるが、この先ポータブルトイレの使用に限って話を進めたいと思う。
先に述べたようにたとえ一人でポータブルトイレに移動出来るようになったとしても、その後処理をどうするかという問題も出てくる。
そこで話が長々となってしまったが今日のお題「おばぁちゃまの知恵」の話になる。この話を教えてくださったある高齢の女性の方は入院される以前からポータブルトイレを利用されている方であった(身体的、家庭的二つの要因により)。だから当然退院後も「排泄にはポータブルトイレを使用出来るようになる」ということを目標に色々と進めて行った。
結果的にその方はポータブルトイレが自立して使用出来るようになった。それはそれで良かったのだが、新たに一つの気掛かりも出現した。それが先程述べた「ポータブルトイレの後処理」の問題である。ポータブルトイレは下水に接続されているわけではないので、使用後にはその容器内を処理しなきゃならない。その方の場合、ポータブルトイレでの排泄は自立したが、日中は家族中が留守になるため容器の後処理をしてくれる人物が誰もいないということであった。
「一体どうしたものか?」と考えた挙句に、その方に「どうする?」と訊ねてみたところ、すでに答えがあったようであっさりと答えが返ってききた。

「先生、こうすんのやで」
と教えて頂いたのは次のような方法だった。

  1. ポータブルトイレの内容器にゴミ袋をかける
  2. 新聞紙を大量に細かく千切って中にいれておく(このような袋を何組も作っておく)
  3. 用をたした後はゴミ袋を取り外し、硬く縛って別のゴミ袋に入れておく
  4. 新しいゴミ袋と新聞紙のセットを内容器にかけておく
  5. 後は家人にゴミと一緒に処分してもらう

といったものであった。
思わず「あー、ナルホド!」と言ってしまった。
更にその方曰く、新聞紙を細かく千切ることでその際に活字を読んで頭を使い、手先を使う練習にもなるということであった。

上記の行為が正しいかどうかは解らないが、少なくともこの方とその御家族はは日常生活において多年に渡り介護者と要介護者の間に良好な関係を築いてこられたことは確かである。

というように私が<仕事>の中で得た一つのポータブルトイレの活用方法であった。

上記のような様々な排泄に関する事柄は、単に私の就業経験から得た個人的な考えであるので、一つの可能性・考えとしてください。
排泄物の処理に関しても自治体により様々な規定があるとは思いますが、なかなかそれを遵守することが難しい状況もあります。ですので、今回「おばぁちゃまの知恵」として紹介した内容が“不適切”なものであるかもしれませんが、介護生活を続けられているご家族が得られた一つの方法であることを御理解ください。

*1:80代半ばの女性が独りで新幹線に乗って熱海に行くなど