ローマ人の物語 〜キリストの勝利〜


この時期のお楽しみ「ローマ人の物語(文庫版)」を読み終えた。
今回は帝国もいよいよ末期となり、今まで栄華を誇った各種のローマのシステム・メカニズムも働いていない世界での話。

著者の塩野氏は別のところでローマの帝国末期の時期を次のように書いていた。

亡国の悲劇とは、人材が欠乏するから起こるのではなく、人材はいてもそれを使いこなすメカニズムが機能しなくなるから起るのだ。


その中、帝国末期の混乱時期に乗じて今では世界を賑わす三大宗教の一つとなったキリスト教が如何にして宗教としての地位を確立し、権力を掴みとり、どうやってローマ唯一の国教となっていったかを記し、副題を「キリスト教の勝利」とした文庫本三冊である。

ローマ人の物語〈38〉キリストの勝利〈上〉 (新潮文庫)

ローマ人の物語〈38〉キリストの勝利〈上〉 (新潮文庫)


ローマ人の物語〈39〉キリストの勝利〈中〉 (新潮文庫)

ローマ人の物語〈39〉キリストの勝利〈中〉 (新潮文庫)


ローマ人の物語〈40〉キリストの勝利〈下〉 (新潮文庫)

ローマ人の物語〈40〉キリストの勝利〈下〉 (新潮文庫)

読み終えて、帝国末期に混乱が蔓延った国を統治するためにキリスト教の力を借りていくしかなかった橙の皇帝たち、そしてそうやって皇帝たちが帝国を統べるためにはキリスト教の力をかりなくてはならなくなった機会を見逃さずに、教会権力の更なる拡大のために上手く立ち回っていったキリスト教の幹部たち、そしてキリスト教が完全に「勝利」を掴もうとするのをなんとか阻止しようとしていた人物たち。。。
読むことでキリスト教の持つ、私たち日本人には馴染みの少ない一神教の世界観、唯一神のみを認めるという考えの一端が少し理解することができるのではないかと思う。

ちなみに塩野氏はキリスト教に対してこれまた別のところで以下のように書いていた。

一神教こそが人間世界の諸悪の根源、と思っている私は宗教としてのキリスト教は嫌いだが、人間としてのイエスは好きである。お前たちはなぜわからないのか、と弟子たち相手に嘆くイエスも好きだし、神殿前の広場を占領した金貸し業やその他のいかがわしい露店をひっくり返していく、怒れるイエスも好きである。また、ソロモンの栄華も野の百合の一輪の前には、なんて説く、詩的で心優しいイエスも悪くない。