ある人の歴史
仕事の途中で、患者さんと話す時間が多い。
相手の方は女性でも、男性でも私より遥かにご年配で、遥かに多くの経験をされている方が多い。
なのでそういった方たちからこれまでの人生経験を聞かせていただくことはとても重要であると思っている。
そんな中90歳台の男性が話してくださったこと。
- 戦争で中国大陸に行っていた。各地を転戦した。最後は満州へ行くことになった。
- 満州の任地に行く途中で、前線から引き返して来た他の部隊とであった。だからそれ以上先にある任地に行けなかった。
- そして終戦になった。
- しばらくするとソ連の戦車隊が侵攻してきた。どうしようもなかった。
- 命令を聞かずに脱走し帰ろうとした人もいたが、多くは戦車に囲まれていたようだった。
- 脱走した人の事を今生きている人間がとやかく言っても仕方がない。
- 2年半、シベリアに行った。
- 農業、建築、採鉱、色々な作業をやった。-40℃になるとようやく作業が中止になる。
- 作業を頑張ると食料の配給が増えた。だからそれを目当てに頑張っている人もいた。
- 思想教育はあったけど、捕虜の間は真面目にやっているフリだけしていた。舞鶴に帰ってきた時にはその内容は忘れてやった。
などなど
こんな具合で色々と教えてくださった。
本、教科書でしか知り得なかった知識に、生身で体験された人の記憶と経験が加わると、自分の知識に対する感覚が少し違うものになった。
こういった話は貴重だ。