飲酒と情報
この一冊に書かれている中身はかなり面白い。
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/01
- メディア: 単行本
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(酒による情報収集について)「モサド」(イスラエル諜報特務局)の伝説的スパイだったウォルフガング・ロッツはこう述べている。
酒を飲むと口が軽くなることうけあいというが、私の見解からいってもこれは正しい。多くの貴重な情報は酔っている人から入手される。困ったことにこれは両刃の剣で、ブーメランのように自分にはね返ってきかねない。酒には酒をという飲み比べをするはめになると、どちらがよけいに飲めるかという問題になってしまう。酒飲みたちは飲めない人を信用しないものであるから、一滴も飲まなかったり、飲んでもほんの少しだったりすると、貴重な情報源を失いかねない。
どういう場合にどれくらい飲むべきかについて、情報部員に適切な助言をあたえることはできない。たくさんの要因によるからである。あなたの酒量の範囲内に余裕を残してとどまるというのが、一つの良いめやすである。(『スパイのためのハンドブック』P.29)
(中略)
私の過去の経験からすると、相手が酩酊して話した情報の信憑性は結構高い。その場合、翌日、しらふになった相手に前日の情報の内容を確認しないことである。相手が重要情報を漏らしたことを忘れている場合、寝た子を起こして、警戒感を抱かせる必要はない。
それから、日本人、特に官僚と政治家に適用すると効果が大きいのであるが、秘密情報について、相手に質問し、返事が返ってこないときに、「ああ、失礼しました。あなたは知らないのですね」とさりげなく呟くことだ。次の瞬間に相手が、色をなして「そんなことはない。俺はちゃんと知っている」と言って、秘密を語ることが、私の経験則では三割程度の確率である。「情報を伝えられていないということは、重要人物ではないことの証拠」というような、情報伝達を巡る日本特有の文化に付け込むのだ。
国際スタンダードでは、情報は「区分(クオーター)化の原則」が徹底していて、政府高官でも担当分野が異なれば、重要情報を知らされていないことはよくある。日本でも外務省や防衛省からの情報漏洩が続出するため、秘密保全体制の強化が言われるが、実効性が担保されていないのは、「情報を伝えられていないということは、重要人物でないことの証拠」という文化が存在するからだ。また実態としても重要人物は、その地位にかかわらず重要情報を知っている。
永田町や銀座の雑居ビルやマンションの一室を借りたロビイストが、外務省の課長級以上の幹部しか知らないような外交秘密情報をもっていることは珍しくない。
酒の席の話題には注意しましょう!!