整理されない引き出しと本棚

私自身の最近気になる問題として、「複数の相手に対して通じる説得力のある話し方が出来ていない」ということを感じている。
環境を理由にすることは嫌なのだが、自分から外に出ることの少ない相手が来ることを待っている職場、そして日々出会う人々は変わらない顔ぶれ、そして人に話す内容は相手によって多少違うがほぼ中身は同じ内容・・・。数え上げれば限がない。
だから、もし自分が本を読んだりすることで得た知識や考えを人に話す機会があまり無いということが問題なのだろう。同僚にも私と同じことに少なからず興味をもっている人物が見当たらず、独りで自問自答している。

結果として、私の頭の中はタイトルの通り「整理されない引き出しと本棚」のように現在や過去に得た知識や考えが乱雑に詰め込むだけ詰め込まれているような感じだ。だから、話をするとき、文章を書くときに適切な引き出しを開けたり、もっともな引用文を探し出しての効果的な表現、話し方が出来ないと自身では思っている。
少なくとも今の私は大学生の頃の自分より、文章力、説得力が低下しているようでとても嘆かわしいのだ。

って事を書いているうちに思い出したのだが、依然に読んだキケロの確か「弁論家について」の中に、“雄弁に語り、そして相手を納得させる弁論術を身に付けるためには、古今東西のあらゆる知識を身に付けその上で徹底的に「鉄筆する」ことだ。”とあったと思う。「鉄筆」とは古代ローマ時代には記録を今のように紙にペンではなく、粘土板に鉄の鉤のようなもので記していたそうで、だから「鉄筆をする」とは自分の考えを書き記して整理していくということらしい。

弁論家について〈上〉 (岩波文庫)

弁論家について〈上〉 (岩波文庫)

弁論家について〈下〉 (岩波文庫)

弁論家について〈下〉 (岩波文庫)

となると、今の私には圧倒的に「鉄筆」は足りていない。
テーマを決めてそれについて量を設定して書く作業をすべきなのだろう。退化はしたくない。